始めに
下の「売買記録」で述べていた買収リスクの評価方法に関するコメントが、もはやコメントという量ではなくなってしまいました。読みにくくなってしまったので記事を分離します。
本格的な研究記事ではないため、やや考察と検証が浅いところがあるかもしれませんがご容赦ください。後日「2025年の全てのTOB案件」を調査するなどして焼き直し記事を作成します。
買収される企業の特徴
空売りする場合だけでなく、通常の買い取引においても「その企業が買収されうるのかどうか」というのは重大な関心ごとです。
買収される企業を「買収する側」の目的で考えると買収リスクが見えてきます。買う側は買収対象の企業の「何か」が欲しいわけです。
- 従業員(=技術)が欲しい
- 店(あるいは工場)が欲しい
- 客が欲しい
大抵この3つのうち複数です。まさに「人・物・金」です。そしてそこれらを持っている企業の時価総額が安い場合、割安だから買ってしまえ、となります。
上場/非上場を問わず、人材派遣や小売りなどでは買収が頻繁に起こりますが、これは上記の3つがそのまま手に入る典型的な例になります。これらの業種は労働集約的で昨今は採用難で人が欲しい・好立地の店舗や好条件の派遣先は他社にすでに抑えられているのでこれが丸ごと欲しい・その店やブランドに付いている顧客あるいは顧客情報を丸ごと欲しい、という具合です。
この視点で考えると、例えば自動車や電機業界、あるいは警備会社や外食チェーンなどに多く見られる、特定の系列企業に依存した下請け会社を買収する意味はほとんどありません。世界中の会社を顧客にしてニッチ分野で世界シェアトップ(そうでなくても国内シェアトップ)、というなら明確に技術力があり顧客へのコネクションを持っているので買収する価値もあるでしょう。
ティラドの例
しかし上記の売買記録の記事で述べた
[7236]ティラド
のように「トヨタ系列」と四季報に書かれているような場合、わざわざ他の企業が買収してまで取りに来るような独自の技術力は無いと考えます。もしそのような技術力があるならば買収されるよりも前に、まずは世界中の顧客が普通にその会社の商品やサービスを買うはずですが、そうなっていません。
また工場はトヨタ系の専用設備で買う意味もない、肝心の客もトヨタ系と分かっているのでこれまた買う意味がない。トヨタ自動車というある意味「世界最強軍団」の下請けに入るというのはこれまた別の意味で独自のノウハウが必要ですが、少なくとも他の企業が欲しがるものではありません。
ということで上記のティラドは買収リスクが極めて限定的と判断した次第です。もし本当に重要ならば例えばダイハツのようにトヨタがとっくに買って経営統合しているはずです。
親子上場解消パターン
ただし、あまりに系列が強くて50%以上の株を持つと連結子会社になってしまうため、今度は「親子上場解消」という強烈な買収目的が発生してしまうので事業内容だけでなく株主構成も要注意です。これも四季報に載っていますので容易に確認できます。
親子上場解消のためのTOB発動を狙って連結子会社の株をず~っと持っている、というのも定番の投資法のうちの一つです。TOBが出た瞬間に株価が30%ほどプレミアムが付くのでその分が儲け、という狙いです。連結子会社なのでつぶれませんし、安心の投資先と考えるのでしょう。もっとも親会社側がヤラれてしまえば意味ないですが。
MBOによる上場廃止パターン
もう一つ、MBO(経営陣による買収)が起こるメカニズムも注意が必要です。わざわざ上場したにも関わらず、自ら非上場を選ぶメリットとその条件は以下のようにシンプルです
- 会社の時価総額が安くなってしまい、買い戻したほうが創業者の資産が増える
- 実際に市場の株を買い占められるだけの資金をIPOや配当で既に得ている
- 金を出せば実際に買えそう
100憶円の簿価あるいは評価額の会社の時価総額が300憶円あったら、足りない200憶円はどこから調達するのか?という問題があります。言い換えれば100憶の簿価の会社の時価総額が80億円だったら、買うだけで20億円の資産超過になりますので、本当に貸す銀行があるかどうか別として銀行から80億円借金してMBOしてもよいわけです。
またいくら簿価評価で安いからと言っても、1000億円以上まで時価総額が膨らんでしまった株全てを創業家が買い集めることは物理的に不可能です。経営統合ならば1000億円でも3000億円でもパワープレイで買収はあり得る話ですが、MBOは上場企業を再び個人資産化するわけですから、その規模ではまず考えられません。
もう一つ。時価総額が安かったとしても、個人投資家やアクティブファンドが大量に株を持っている場合に「MBOします」と言っても実際に買い集めることは困難です。「もっと高くないと買わない」と足元を見た誰かが言い出すので値段がどんどん吊り上がっていってしまいます。
というわけで、PBRが低くて時価総額も低くて、株主構成が上位数名で50%近く行っているような銘柄もMBOリスクがあるので注意です。
買収リスクの重要性
このように買収リスクは定性的な要素が多岐に渡り、リスクに応じたロット管理が重要です。買収提案が入ると株価は30%程度のプレミアムが乗るのが一般的なので、S高が2~3営業日続くのが確定します。これでは空売り勢は焼き尽くされます。
※本ブログは私の投資結果および研究成果を記録するものであり、特定の投資商品や銘柄を推奨するものではありません。


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