【研究ノート】配当銘柄3段ロケット手法とは?

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始めに

こちらの記事で予告していた、配当権利付最終日前後の投資手法の「3段ロケット」の解説をするために単独の記事にします。

具体的なやりかた

そもそも私の言う3段ロケットとは何か、解説します。

1段目:前日の買い

高配当銘柄を配当権利付最終日(以下、権利付日と表記)の前日に買います。これは、権利付日のギリギリに買って価格変動リスクをかぶらずに配当だけを貰おう、という配当貴族ならぬ言わば「配当乞食」の買いによる需給の変化を捉えようという買い方です。

2段目:当日のドテン売り

前日買った銘柄を権利付日の大引けで全て売り、さらにドテンで空売りします。これは、権利付日の大引けが上記の配当狙いの買い需要が最大化するタイミングだからです。

そしてこの後は権利落ちするだけで買い需要は一切発生しませんので、ロングポジションを持っている妥当性はありませんので空売りとなります。

3段目(1):翌日の買い戻し

権利落日の寄付では、権利付日で配当を貰える権利が確定した大量の株が売りに出されます。ここで大幅に株価が下落しますので昨日の売り建てをすべて決済して、更にドテンで買いを入れます。

配当額分だけの株価が落ちる、と教科書には書かれていますが、これはあくまで理論株価の話であって、実際の株価は買いと売りの板の圧力差で決まります

「高配当銘柄」で検索して買いに入ってくる投資家は、実際に配当を貰うという目的がありますので、理論株価がどうなっていようとも買わなければいけませんし売らなければいけないのです。
こうして朝の株価は理論株価を突き抜けて大幅に下がります。

3段目(2):同時にドテン買い

(長いので項目を分けましたが買い戻しと同タイミングです。)

さて、上で「理論株価よりも下がる」と書きましたが、非常にわかりやすい形で理論株価より安くなった銘柄はどうなるか。買いが集まります。

株価が下落することが分かって事前に空売りを入れているわけですから、同様に「事前に」買いを入れておくことも可能になります。

ここのタイミングのずれに対しては非常に高度な理解が必要です。株価が大きく下がるのは寄付ですが、実際に寄り付くまで株価は確定しません。しかし株価が確定したら今度はその株価で買うことはできません

つまり9時前に成行注文を出しておく必要があります。この注文はオーバーシュートが十分に解消されるその日の大引けで決済します。

意外に考える項目が多い

少し勉強した人ならば、いくら株価が下落すると言っても配当分を払わなければいけない(配当落調整金)のだから意味が無いのでは?と思うかもしれません。しかし上に書いたように下落する株価が理論株価として推定されることと、実際の株価が配当落調整金より多いか少ないか、ということは独立事象です。

つまり、配当落調整金よりも大きく下落する銘柄をどうやって探すのか?と言う手法の話となります。

そう簡単には儲からない?

この手法は割と顕在化しやすい需給のゆがみを突くやりかたなのですが、この調整金に加えて後述の逆日歩の存在もあり、考えることがかなり多く、かえって損する人も少なくありません。というか皆が儲かっていたらこの歪みは消えるはずです。

銘柄の選び方

ここに一つの工夫を入れます。今回の銘柄選定ですが、8月権利日の高配当ランキングから選んでいます。しかしながら、単純に高配当順に選んでいるのではなく

「半年前の権利落日での株価下落が配当額に満たなかった銘柄(終値基準)」

というルールに該当する銘柄でした。言い換えると「配当を貰って一日で逃げる【配当乞食】が儲かった銘柄」=「配当落ち狙いの空売りが失敗した銘柄」となります。配当落ちで株価が下落しなかった銘柄を空売りしてはいけないのでは?と考えるかもしれませんが、まさにそこがカギになっていて、配当狙いの買いや配当落ち狙い空売り勢が真っ先に確認するのは

「この銘柄はどれくらい配当落ちするのかどうか?」という推定

です。そして半年前に配当落ちが少なかった銘柄を選んで、今回も同様の結果になると勝手に期待して、配当前に空売りではなく買って配当を貰おうとします。そうすると何が起こるかというと、半年前に配当落ちが少なかった銘柄に配当狙いの短期投資家が殺到して、翌日売りが集中して株価が大幅下落します。

短期の学習効果仮説とは

投資家を広く一般化すると、3か月前の決算や半年前の権利付日の値動きを参照して、「今回も同様の値動きになるだろう」と勝手に推定して売買注文を出しがちです。私はこれを「短期の学習効果仮説」と呼んでいます。この効果により需給が読めるようになりますので、その需給歪みを予測して捉えることで、利益が得られる、という仕組みです。

なお、この短期の学習効果仮説は日経平均採用銘柄のような極端に出来高が厚い銘柄には効きません。なぜなら日経平均採用銘柄はインデックスの売買や海外の巨大ファンドの売買が出来高の大半を占め、個人のちょっとした考えによる売買などは、その巨大な出来高に完全に流されてしまうためです。

配当落ち狙いにおいても、売買代金が数十億円を超えるような大型株は外しておく必要があります。この代金からすると配当狙いの個人の注文などゴミのようです。

実際の値動き

実際にはこのような値動きと収支になりました。3銘柄は制度信用売りができない銘柄でしたので1段目と3段目の買い側のみです。

銘柄コード23792927367A443376078185時間軸の合計
前日の買い¥1,600¥-1,200¥7,100¥500¥-3,000¥-800¥4,200
権利落ち跨ぎの売り¥14,400¥14,000¥28,800¥17,475
(逆日歩)¥-1,140¥-850¥-1,320
(配当落調整金)¥-12,195¥-10,501¥-13,719
翌日のオーバーシュート復帰狙いの買い¥400¥-600¥11,600¥500¥-1,500¥-2,800¥7,600
銘柄軸の合計¥3,065¥-1,800¥18,700¥1,000¥-1,851¥10,161¥29,275

まず時間方向で見るといずれのタイミングでも利益となりました。

一番大きいのはやはりメインである権利落ちの空売りです。権利落ちで株価が大きく下落するのは当然なのですが、そこから逆日歩と配当落調整金を負担しますので実際は全額が利益になるわけではありません。差額で考えましょう。

そして翌日の理論株価からの乖離を回収する値動きもきっちりプラスになっています。

次に銘柄方向を見ていきます。流石に6銘柄も入れるとマイナスのエントリー銘柄もありますが、同様に全部足すと平均化されて最終的にはプラスになります。

重要なのはこの「最終的にプラス」という結果であり、一つ一つの取引に注目してしまうとまるでランダムな売買をしているように見えてしまいます。プラスになるかマイナスになるか分からない取引の中に、確実にコストになる逆日歩と調整金が大きく存在します。

逆日歩怖い?

(逆日歩の計算に誤りがあったので内容を一部訂正しています 2026/08/31)

空売り全般で言えることなのですが、よく言われる逆日歩についての理解が甘いまま制度信用売りを避けている人が多いように感じます。

しかし見ていただきたいのが今回の逆日歩の金額です。たった3,310円です。ほぼゼロ、とは言い切れないやや気になる数字ですが、株価に対してはおよそ0.2%ですので、確実に下落が取りに行けると分かっている段階であればもはや取引コストの一部と言えるでしょう。

逆日歩が最も顕著になる権利付最終日においてもこの程度だった、という事例は感覚として捉えておきましょう。稀に外れ値が来ることがありますが、いずれにしても一日の逆日歩で破産した人はいません。

一般信用では逆日歩が発生しませんが、そもそも高配当株の権利日前後は一般信用売りの株が枯渇して一般信用売りができなくなります。それでも一般信用で売りたい人は、一か月前から売っておく必要がありますが、一か月分の貸株料が3000円で収まるとは思えません。

空売りのコストを正しく理解する

逆日歩が怖いのは例えば長期のショートポジションであり、あるいはクオカードが貰える優待株のクロス取引です。逆日歩がたとえ100円であっても、一か月ショートを持っていたら3千円になってしまいます。

また、クオカード優待銘柄の権利付日は優待狙いのクロス取引の売りが殺到することで、逆日歩が株価の2%近くに達する場合もあって、無料でクオカードが貰えたと思ったらその金額分の逆日歩が請求されて意味なかった、などと言うことが起こりがちです。

いずれにしても空売りを交えた投資手法を実行しようとする場合、ネットの初心者向けの記事を読むだけでなく、実際の銘柄の株価変動と逆日歩と一般信用売りの在庫を実際に確認して把握しておく必要があります。損失を回避しているつもりが、かえってコスト高の取引をすることになりかねません。

この手の手法を解説したサイトや本は少なくないですが、結構嘘を書いている人も多いですよ。そういう意味では初心者が大好きなクロス売買による優待ゲット術は、本来は上級者向けと言えます。

私でもできますか?

この投資法は極めてイージーで誰でもできる手法のようにも見え、また実際の手の動きだけを見るとそうなのですが、正確に銘柄を選定し、2日の間に銘柄数×3の売買注文を出し、度重なるドテン売買と決済という操作を何一つ間違わずに行わなければいけないという点で、少なくとも万人にお勧めできる手法ではありません。

資金効率が悪い

今回の3段ロケット6本を稼働させるのに必要な資金量も400万円強であり、買い付け余力のためには信用証拠金で150万円以上必要です。利回りで2%ちょっとです。一日あたり1%の利回りと考えると驚異的ですが、権利付日は年12回しかありませんので、これ単体で考えると資金効率が悪いことこの上ありません。

ここから得られる学びを

そのため何か他の投資との組み合わせで考える必要がありますが、権利付日前後の株価の動きは長期短期関係なくすべての投資家に意味がある話ですので、これくらいの解像度で理解しておくといろいろなヒントが得られるようになってくると思います。

アルパカ先生
アルパカ先生

「配当落ち」だけでどこまで語れるのか?という話です。銘柄を勉強する前に、こういうことを勉強しましょう。

※本ブログは私の投資結果および研究成果を記録するものであり、特定の投資商品や銘柄を推奨するものではありません。

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